小海線(八ヶ岳高原線)

小海線八ヶ岳高原線


青い山脈(1957)

皆さんは青い山脈という歌や映画を知っているだろうか。もちろん戦後間もないころのもので、私はまだ生まれてもいない、つまりリアルタイムでは知らない世代である。昭和22年に朝日新聞で連載され、昭和24年に映画化されたものである。自然豊かな景色の中を男女の若人が自転車で走るシーンは、今見ると大したことではないのだが、戦後からまだ立ち直ったとは到底思えないこの時期の人々にはあり得ない光景であっただろう。長く抑圧された時代から解放されたとはいうものの、映画公開当時は憧れを持って見ていた人もあるかもしれないが、多くの人は男女の距離感があまりにも近すぎて嫌悪感や中には卒倒した人もいるかも知れない。きっと今の失楽園をはるかに凌ぐものだったに違いない。「青い山脈」は当時としては超トレンディな、流行の最先端を行っていたのではないかと思う。その後次々に生まれる青春ドラマに多大な影響を与えたと思われる。


80年代CM 50

でも私の青春時代は、田原俊彦さんと松田聖子さんのグリコアーモンドチョコレートのコマーシャルが懐かしい世代である。「ハッとして グッときて パッと目覚めた・・・」のである。そのCMのロケ地としても有名な清里や、まさに青い山脈と呼ぶにふさわしい南アルプスの風景、JRの標高が最も高い野辺山辺りを走る高原列車の代表格である小海線を取り上げてみたい。


JR小海線 ハイブリッドDC・キハE200

現在小海線には、通常のクリーム色と緑色の車両の他に、ハイブリッド車が導入されている。電化されていない小海線は当然ディーゼル車が走る。そこで車のハイブリッドと同様に、モーターとディーゼルエンジンを併用して走る車両が導入されている。まさに環境にやさしい車両と言える。これに一度乗ってみたいと思っていたのである。電化されていないがゆえに架線や電柱などの景色を遮るものがなく、素晴らしい景観をより強固なものとしている。
路線は中央本線小淵沢駅しなの鉄道小諸駅間を結んでいる。小淵沢から清里までは山梨県、野辺山以北は長野県である。実際に乗車した感覚では、小淵沢から野辺山辺りまでは緑が多く主として観光列車の趣が強く、小諸に近づくにつれて人家が増え通勤通学の足となっているようだ。実際小諸駅と中込駅の間は通勤通学の時間帯には約20分間隔で運転されている。この区間には新幹線の停車駅でもある「佐久平」駅がある。逆に小淵沢からの発車本数は2時間に一本程度のため、旅行スケジュールを組むには注意が必要である。


メルヘンの廃墟~清里2015/08/29


清里1986年

私が初めて小海線に乗ったのは、もう清里ブームが去って久しい頃である。ブームの頃にはテレビで繰り返し特集を組んだり、その盛況ぶりが放送されていたが、当時貧乏学生だった私には憧れはあったものの高嶺の花だったし、遠いというイメージしかなかった。降り立った駅の周辺は、遠くからはよく分からないが、近くに行くと空き店舗や閉店してかなり経っているような雰囲気の建物が多い。おそらく所有権の関係で手つかずのままになっているのだろう。往時を偲ばせるには何とも寂しい光景である。一方で清泉寮まで足を延ばすと、見事な牧場や、通行には車より優先されるという飼育されている牛、そして彼方には雄大な富士山までも見渡せる絶景がそこにある。これほどの高地でありながら比較的なだらかで、高原野菜の産地である。もちろん別荘地でもある。あと少しだけこの地域の顔である駅周辺の整備が進めば、ブームではない本物のというか、本来の清里が現れるのではないかと思う。


野辺山駅→清里駅 JR最高地点アナウンス

このときの宿泊先は野辺山に取っていた。JRの標高が最も高いところを走る最高地点を見てみたいと思っていたからである。ところがその日は台風が日本列島に接近しており天候は最悪だった。明日こそは台風一過の絶景があると信じて就寝した。翌日願いは通じてか、雨が空の塵を洗い流して抜群の天気となった。JR最高地点周辺も前述の通りなだらかな地形でサイクリングを楽しむことができる。